第45回テーマ 【 住まいの中で、本物の木肌ありますか? 】
-2022年11月21日 第568号 掲載-
近年、内装仕上げ材の多くが
木の模様であっても、手触りまでも
再現された印刷シートが多様されています。
木造住宅が良いと言っても
だいたいは、完成すると見えなくなる
構造の部分だけに、木が使われています。
カタログの写真では
ほとんど印刷シートか、本物の木か
わからないくらいです。
例えば、
どんな場所かと言えば、、、
玄関ドア。
アルミの上に木目調シート貼り
実際に、天然木で作った時に比べて
お手入れ簡単で太陽や雨からの風化しにくく
天然木の仕様のように塗装もなくなりました。
他にも、窓枠、床フローリング
室内建具や、浴室の壁
ほとんどの部材がこのシート貼りです。
LIXILやPanasonicから選べば
全国に流通しているので、どこの大工さんが
作っても、同じ感じで完成します。
これには、作り手の工務店さんにも
使うメリットがあり、
まずは、現場で行う塗装工事が必要なくなり
コストダウン、工期短縮、職人による色違いなどの
クレームもなくなり、打合わせもラクです。
建主側も、家は高額なので
建築後は、掃除やメンテナンスの
手間がかからない希望と一致します。
しかしながら、ひとつの家の中で
天然無垢フローリング床材や木の窓枠や
建具、そして漆喰や珪藻土など
現場で比べてしまうと、写真ではわからなくても
夏の室内での体感の差は歴然です。
違いはなんなのか、、、
質感、手触り?
なんでしょう?
湿度の高い時期に
木調の印刷シート貼りの部分を
手や足で覆うと、じんわり結露しますが
天然木のオイル塗装の無垢フローリングでは
じんわり結露にもならないです。
違いは、質感と言っても
日本ならではの高温多湿での
『 湿感 』の差だと思います。
素材の『 呼吸 』と表現した方が
わかりやすいでしょうか。
あんなに、寒くても
いまだに古民家や、古い木の建具に
惹かれるのも、本物の木肌の手触りから
呼吸している感じが、人には
心地良く思うのではないでしょうか。
しかしながら。だからと言っても
私は、昔の古民家の様な土壁や木の建具が
毎日の暮らしに、すべてが最高だとは
思っていません。淘汰されて来たのは
ここでは触れませんが、それなりの理由があります。
四季を楽しめる日本でしたが
夏がとても長く、暑く感じるようになり
今一度、この湿感と共存する暮らしを考えます。
先日の四国高松への旅で
栗林公園内にある掬月亭訪れた時に
天井が、和紙貼りと珍しい仕様になっていました。
園内のガイドさんによると
調湿のため土佐の和紙を
障子の様に、天井に使われたとのことでした。
この手法は、数寄家造りの設計でも
有名な建築家、村野藤吾さんも惚れ込み
自信の作品にも取り込まれたそうです。
今は秋の気持ちの良い季節ですが
日本人ならではの、湿感!
これからも、大事に考えていきたいと思います。