第40回テーマ 【 陰影礼賛 】

-2022年9月12日 第558号 掲載-

9月10日は「中秋の名月」「十五夜」とも
いわれるこの日、帰宅しながらとても大きく
神秘的な満月を見ることができました。

自然の雄大さの流れに心が癒される。

今宵は、散歩しながら月の姿を楽しもうかと
思ったが、意外にも街のLED化された
外灯がまぶしかった。

それならば、久しぶりに家の中の電気を
ひとつずつ消しいき、月見に丁度良い暗さを
みつけてみたりした。

最近の旅が、京都に行くことが多いからか
あの薄す暗い社寺などの影響もうけ
少し古典回顧的な気分も楽しむ。

谷崎潤一郎 名著『陰翳礼讃』思い出し
日本の陰影から導かれる美学を
もう一度読み直そう。

思い起こせば、最近の住まいづくりの打合せで
入浴時に、電気を消して湯船に入る方が
ひとり、いやふたり、さんにんくらいだったか
いらっしゃいました。

俗に言う、闇風呂ですね。

足下さえ気をつければ
浴槽の水面の揺らぎなど感じ取りながら
PCやスマホの眩しさから開放され
身体やこころを休まる時間になります。

高度経済成長のころの
電気のテレビCMでは
明るいナショナル!と謳われ
部屋の隅々まで明るいのが
これからの日本の幸せの暮らし
そんな時代背景でした。

日本は、いま減速期になりましたが
ここらで、暮らしの明るさも
省エネの観点からだけではなく
日本の美学の視点から、少し暗めで
しつらえても良いかと思います。

今日は、満月から部屋の灯りを
考え直してみるお話しでした。