第21回テーマ  【 日本の四季と住まいのしつらえ 】

2021年11月25日 第520号 掲載

いま、春と秋の季節感が薄れつつあります。
四季と日本人とのかかわりは深く
めぐる季節を節目に日本の家屋のなかでも
古しえの行事が行われてきました。

もうすぐ 12月

冬至には、ゆず湯
寒さから苔を守るため松葉を敷込、敷き松葉
お正月を迎えるお飾りを山にとりにいく 松迎え
生活のなかで愛用している道具に
丸餅に南天など添える 年取り餅飾りなど

日本人は、特別な信仰を持たない家も
多いかと思いますが、季節を感じる行事の中に
感謝という祈りが人に溶け込んでいると思います。

床の間のある家なら
季節により掛け軸やお花や花器などの
楽しみなどわかりやすいかもしれません。

現代の家では床の間など無くなり
社会の多様さや新しい家のかたちの中でも
季節の習わしは、個々人の暮らしに寄り添う形態で
アップデートし受け継いでいきたいものです。

できれば、買ってきたものをそのまま飾ったり
食べたりするのではなく、ひと手間かける
藁を編んだり、だんごをこねたり
草木土などを触ったり、火を焚いたり
指先に残る感覚により記憶が大切です。

古しえの行事や習わしは、やはり面倒にも感じ
忙しい時代に、わざわざ時間を割く
優先順位は低いかもしれません。

しかし、親子でお月見のだんごをこねた体験などは
意外におとなになっても覚えているものです。
心を豊かにするためには感覚の体験が必要です。

日本人として、そして建築家として
習わしの長所の部分をどのように空間に
反映させることができるか、検証の日々です。

前回、紹介したVRの世界では
まだ、古き習わしも温度も臭いや手触り
まして、四季の変化も感じられない世界が
動きだしたことにより、現実世界での
体験という感覚がより大切になって
いくことでしょう。

日も短くなり、寂しい感じになりましたが
夜長を楽しみたいと思います。

#四季の暮らし
#古の習わし
#クリエイティブな記憶