訪れる人で賑わう元町ショッピングストリートを抜け、谷戸坂を登ればベイエリアを一望する港の見える丘公園。
通りの右手には外人墓地、そして教会や通りを彩るカフェ。
港の見える丘公園から続く山手本通りに面しながらも、その一角だけは森のような印象を道ゆく人に与え
観光地・横浜とは程よい距離を保つのが山手町225番地である。
1859年の開港以来、横浜の歴史と文化を担ってきたこの一帯。
その由緒正しき「225」のアドレスと、現代に引き継がれた山手らしさを継承し
次世代に残し伝えていくにふさわしい「街の風景」を構成するに足るような資質のある建築をコンセプトに設計されている。
前記のとおり、山手町の南西部分「山手本通り」と「地蔵坂公園」に面した地蔵坂上の三方角地に建つグランドメゾン山手225。
優雅な低層住宅、間取は全て100㎡以上のワイドスパン仕様である。
横浜山手のメイン通りは、質の高い洋館や住宅が緑と一体になり、現在も良質な街並みを残している。
その街並みに十分な配慮を払い、いわゆる高級マンションによくある仕上げの豪華さを誇るような外観ではなく抑制されたデザイン
工夫された空間構成、そして適切な素材を使用することにより、洗練された住環境を生み出すことに成功している。
建物は、道沿いのエントランス棟と奥まった全18戸からなる住居棟で構成されている。
エントランス棟では、既存の石塀と樹齢200年を超える木々とその佇まいを最大限残すために前庭と車寄せを広く設けており
大きなガラス面による水平・垂直の線が抽象的であり慎ましいデザインとなっている。
エントランス内部からも周囲の木々を感じ取れる空間。
住居棟は各階にエレベーターと階段を共有する2戸が3組ずつに配置された3階建。
エレベーター前のホールからは、横浜を遠望できる工夫もなされている。
土地が低くなっており快適な眺望が確保できるという敷地南側の好立地を生かすため、部屋の南にはバルコニーを設けず
大きな開口から直接眺望が楽しめるという平面計画上の工夫もなされている。
内部に装飾を凝らすより、外部に広がる風景を取り入れることで土地に住む喜びを感じる。
周囲の景観と馴染んでいくことは、建築においてとても大切である。
塀と樹木という既存の遺産を活かし、建物はなるべく目立たないよう配慮がなされている。
ガラス、コンクリート、石、レンガタイル、天然木など、本物のソリッドな素材が用いられ
経年によってより深みや魅力が増していくように考えられている。
横浜・山手といえばやはり、異国情緒あふれる「洋館」のイメージがあるが
歴史を感じるその洋館たちも、建てられた当時はモダンな建築であったはずである。
街づくりの思想を現代に踏襲しながらも、現在における最高の住まいを作ることが
きっとまたその先の50年後、100年後に同じように受け継がれていく建物になっていくのでだろう。