南を海に、三方を山に囲まれた自然豊かな鎌倉市。
言わずと知れた、源頼朝によって幕府が開かれた古都である。
12世紀の終わりに誕生した日本初の武家政権。
それにともないこの地には多くの寺院が建立された。
政権の「守護神」として設けられた鶴岡八幡宮は幕府の基軸であり、参道の段葛は広く知られた場所である。
鎌倉を訪れた際に、一度は歩いたことがあるはずだ。
そんな段葛に面した土地という特殊な場所に誕生した本マンション。
西口側では駅近くに分譲マンションがいくつかあるものの、東口側には珍しく、段葛沿いの分譲マンションは2024年現在
本マンションだけである。
地上5階建、総戸数は24戸のスーパーレジデンス。
鎌倉は、奥深い歴史を背景に、観光と居住が密接して存在する都市構造になっており、都市景観の維持とともに地元住民の生活環境の保全に対する対応が求められる。
緑量も多く低層建築が大半を占める鎌倉において、中規模マンションの建設ともなれば、地域住民に対する丁寧な説明と配慮が必要となる。
低層建築が多く、歴史を継承する街並みの中、古都の景観と調和するための仕掛けが幾重にも施されており、随所に思慮深いデザインを実現させている。
仏塔建築の重なる軒のように庇を各階外周へとまわして、建築を成す四面すべてが「表の顔」となった外観デザインを実現している。
ガラス窓を大きく取ることで、庇や版築風の壁による和の趣を演出。
逆梁工法の採用と連続する水平窓によって得られた、軒の先に鎌倉の景観が続いて見える開放的なパノラマ眺望も見事だ。
古都鎌倉の歴史をしっかり継承しつつ、建物をモダンに演出している。
上層階一部を後退させ東側小道を生活動線とする周辺住民への圧迫感を軽減し、小道の拡幅で利便性を街に還元。
5階建ての建物が一見すると3階建てに見える。
周辺の圧迫感を減らし、鎌倉の大空を確保した設計である。
外観デザインも、言われなければマンションだとわからない人も多いだろう。
数軒先にホテルメトロポリタン鎌倉があるが、これと比べても遜色ない。
駅からは徒歩4分。
これだけの駅近であるにもかかわらず専有面積にゆとりがあるのはとても珍しい。
どれだけの販売価格になろうとも「そんなの関係ない」と買い手がいる立地だからこその贅沢設計である。
2022年度グッドデザイン賞受賞
居住空間へ鎌倉の豊かな風景を存分に取り込んだ端正な住宅建築である。
春には桜並木ともなり美しさを増す段葛。
鶴岡八幡宮が所有しているため、この眺望が半永久的に変わらないというのも大きな魅力だ。